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第68期王将戦挑戦者決定戦 渡辺棋王VS広瀬八段

10月も終わりが近づいてきましたが、王将の挑戦者決定戦を進行しております。全勝者がいない混戦模様を抜け出すのは誰になるのか?注目の一戦です。


5手目

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渡辺棋王 ▲ なし

広瀬八段 △ なし


初手▲7六歩に△8四歩と相居飛車の出だしとなりました。最近は角換わりに進むことが多いですが、本局は▲6八銀と矢倉に先手が誘導しました。渡辺棋王が3手目に▲6八銀と指すのは約8ヶ月ぶりです。そもそも矢倉が激減した原因として、後手に有力な急戦策が発見されたからです。ここで、渡辺棋王が矢倉を採用したのは、急戦策に対する研究で成果があったのかもしれません。



15手目

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渡辺棋王 ▲ なし

広瀬八段 △ なし


やはり広瀬八段は急戦策の左美濃急戦の作戦を採用しました。基本この作戦では、相手の飛車先の歩は受けません。△3三角と受けると将来、角頭を攻められるリスクが生じてしまうからです。状況によっては守りの桂も攻めに参加させる場合もあります。飛車先を受けない代わりに、△7四歩〜△7三桂の活用を急ぎ、角道を利用して相手を攻め倒す戦法です。



26手目

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渡辺棋王 ▲ 歩

広瀬八段 △ なし


先手は2筋の歩の交換に成功しました。ここから後手の攻めに対して陣形を整えていく展開が予想されます。後手は囲いは完成しているので、△7三桂から攻め駒の活用を図りました。先手としてはどうしても△6五歩からの角道を利用した攻めが気になるところですが、渡辺棋王の対策はどのようなものなのでしょうか?



29手目

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渡辺棋王 ▲ 歩

広瀬八段 △ なし


先手は玉の囲いを優先しました。ただ、8八に玉を移動させるのは角道に入ってしまうので、すぐには指さないと思われます。後手は△6二金として、将来△7三桂を跳ねたときに備えました。△8一飛や△5六銀も指しておきたい手ですが、どのタイミングで仕掛けるのか注目です。やはり、先手を持って攻められる展開になるので、矢倉を避ける傾向にあるのも頷けます。



34手目

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渡辺棋王 ▲ 歩

広瀬八段 △ 歩


後手から△6五歩と仕掛けましたが、同歩と応じずに▲2四歩と合わせました。△2三歩に▲2八飛は一手パスになるので、▲3四飛とするのでしょか?△2三歩と受けないと、▲2二飛成、△同玉、▲7三角成、△同金、▲5五角成の猛攻があります。後手の△8三飛はその筋を受けた手です。先手が▲6八玉〜▲7八玉としたのは飛車を渡す筋を考えたものだったのかもしれません。渡辺棋王の研究が窺えます。

この局面で昼食休憩に入りました。消費時間は渡辺棋王が31分、広瀬八段が1時間11分です。昼食は渡辺棋王がカツ丼とざるそば、広瀬八段がしょうが焼き定食です。



46手目

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渡辺棋王 ▲ 歩2枚

広瀬八段 △ 歩3枚


ただの所にに銀を進出させました。▲同玉、△3四銀、▲3五飛、△同銀で二枚換えになりますが、次に2八飛と打つ筋もあります。形勢は難しそうですが、先手が駒得を生かせる展開にすることができるかがポイントです。



57手目

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渡辺棋王 ▲ 銀、歩2枚

広瀬八段 △ 歩


なんと渡辺棋王は△2八飛に対して、▲1八銀と辛抱しました。駒得ですが、この銀は将来働くことは期待できません。ただ後手の手段も難しく、△2六歩は▲3九銀で飛車が捕獲されます。



79手目

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渡辺棋王 ▲ 銀、歩2枚

広瀬八段 △ 歩2枚


長い戦いになりました。依然として先手が駒得を維持していますが、後手も龍を守りに生かしています。どこが焦点になるのか難しい将棋です。



105手目

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渡辺棋王 ▲ 銀、歩5枚

広瀬八段 △ 銀、香、歩


渡辺棋王が流石の粘りにでています。これはまだまだ長い戦いになりそうです。



144手目

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渡辺棋王 ▲ 角、金、香、歩5枚

広瀬八段 △ 金、銀、桂、香、歩4枚


この局面で渡辺棋王が投了しました。これでリーグ成績を広瀬八段が3勝1敗、渡辺棋王が1勝2敗とし、渡辺棋王が混戦を一歩抜け出しました。次回の対局にも期待です!