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第77期名人戦 第4局 佐藤名人 VS 豊島二冠

5月16日、17日に福岡県飯塚市の「麻生大浦荘」で行われた名人戦を振り返りたいとおもいます。

開幕から3連勝と勢いに乗る豊島二冠ですが、悲願の名人獲得に闘志を燃やす本局ですが、ここまで落ち着いた対局で佐藤名人を圧倒しております。一方、このままでは終われない佐藤名人はなんとか1勝を返して本シリーズの反撃の狼煙をあげたいところです。

ここまでの両者の対戦成績は豊島二冠の14勝6敗と少し差が開いています。



2手目

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豊島二冠 ▲ なし

佐藤名人 △ なし


両者飛車先の歩を突き合う出だしとなりました。ここから相掛りや角換わりの進行が予想されます。今期成績は佐藤名人が1勝3敗(0.250)となります。3敗全てが名人戦によるものです。一方の豊島二冠は4勝0敗(1.000)と全勝をキープしております。



24手目

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豊島二冠 ▲ 角

佐藤名人 △ 角


戦型は角換わり腰掛け銀になりそうです。後手は早々に△7三桂とし、先手を牽制しております。最近では端を省略して後手から仕掛ける将棋も多いところです。



35手目

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豊島二冠 ▲ 角

佐藤名人 △ 角


先手の主張は9筋の端の位を獲得したことです。しかし、その分中央の整備が遅れているため、後手の速攻には注意が必要です。先手は▲4八金ではなく、▲3八金と上がりました。中央が薄くなりますが、手待ちの意味もありそうな手です。



46手目

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豊島二冠 ▲ 角

佐藤名人 △ 角、歩


先手は▲3八金を▲4八金とし、4筋から仕掛けました。▲4五歩、△同歩、▲同桂、△4四銀、▲4六歩と支えた対局で後手は△6五歩と6筋の位を確保しました。次に△6四角と設置して先手の攻めを牽制する意味がありそうです。



59手目

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豊島二冠 ▲ 角

佐藤名人 △ 歩2枚


△6四角に対して4六の地点を▲3七金と受けたあと先手は端攻めにでました。後手玉は1筋から遠ざかっていますが…

△同香ですと、▲1二角が厳しそうです。▲2一角成と▲2三角成を同時に受けることができません。



73手目

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豊島二冠 ▲ 歩

佐藤名人 △ 歩


先手は決断の角を放ちました。この角の働きが本局の行方を左右しそうです。△4三銀と受けられた時に角が働くかが心配ではあります。ここで佐藤名人が封じ手の意思を示しました。ここまでの消費時間は豊島二冠が3時間53分、佐藤名人が3時間51分とほとんど消費時間に差は開きませんでした。



74手目

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豊島二冠 ▲ 歩

佐藤名人 △ 歩


封じ手は△8六歩でした。検討室では△4三銀が本命でしたが…形勢はまだまだ難しそうです。



80手目

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豊島二冠 ▲ 歩

佐藤名人 △ 歩3枚


後手が駒損覚悟で攻めにでました。▲1六角が働いていないのが後手の主張でしょうか?以下、▲同銀、△同飛、▲8七歩までは進みそうですが、そこからの後手の飛車の引き場所が悩ましいところです。



95手目

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豊島二冠 ▲ 歩2枚

佐藤名人 △ 銀、桂、香、歩3枚


駒割りは▲角と△銀、桂、香の3枚換えで後手が駒得ですが、▲4四歩が急所の一手です。



100手目

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豊島二冠 ▲ 歩3枚

佐藤名人 △ 桂、歩3枚


駒取りが各所でかかる展開になりました。▲1六角、△同銀として先手の攻め駒を減らすのが後手の狙いの1つです。以下、▲5六金と逃げておくと△3八銀が遊んでいる印象を受けます。



105手目

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豊島二冠 ▲ 歩3枚

佐藤名人 △ 角、桂、歩3枚


後手の飛車が捕まりました…後手玉は決して堅い形ではありませんので、先手に飛車を渡すのは相当危険です。形勢は先手が良さそうですが、佐藤名人も粘り強い受けが持ち味の棋士ですので、このまま終わるとは思えません。



123手目

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豊島二冠 ▲ 銀、桂、歩

佐藤名人 △ 金、桂、歩5枚


先手が飛車を切って決めにいきました。△同金ですと、▲3四歩が▲5一銀までの詰めろになります。△同馬ですと、▲3三歩、△同玉、▲4五桂、△3二龍までの詰みになります。いよいよ豊島二冠の名人獲得が現実のものとなってきました。



投了図

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豊島二冠 ▲ 銀、歩

佐藤名人 △ 飛、金、銀、桂、歩5枚


この局面で佐藤名人が投了しました。この瞬間に豊島新名人が誕生しました。△同金、▲同銀で上から押さえていけば、先手玉に寄りはありませんので、一手一手となります。これで豊島名人は棋聖、王位を含めた三冠となり頭一つ抜け出しました。名人1期獲得により、同時に九段にも昇格しました。豊島名人はこれから棋聖、王位の防衛戦に臨みます。敗れた佐藤九段ですが、あと2期に迫った永世名人獲得に向けて今期の順位戦に期待です!